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大手損保が「DX部門の解消」を目指す本当の理由

公開日:

2025年12月18日

鳥居亮太

SOMPOホールディングス デジタル・データ戦略部 課長

2008年日本興亜損害保険(現・損害保険ジャパン)に入社。保険金サービス部門にて自動車事故対応の実務経験後、本社の保険金サービス企画部にて全国の業務高度化・デジタル推進を牽引。2021年よりSOMPOホールディングスに出向し、データ利活用基盤を活かした分析・アプリ開発を主導。スクラムマスターとして、現場業務とデジタル双方の知見を融合し、DXの実現に向けてビジネスとテクノロジーをつなぐ架け橋としてグループの変革をリードしている。

酒井喬弘

損保ジャパン 保険金サービス支援部 SJ-R推進室 室長

1999年日本火災(現・現損害保険ジャパン)に入社。保険金サービス部門の実務経験後、本社の保険金サービス企画部にて組織・要員などの戦略立案に従事。2022年から保険金サービス部門全体におけるデジタル戦略・業務プロセス変革を牽引。2023年には不正請求問題発覚後のお客さま対応室の責任者として、信頼回復に向けて奮闘。2024年よりSJ-R推進室の室長として、長年の現場業務における知見と企画力・デジタルの専門性を融合させ、お客さま本位の変革をリードし、未来の保険金サービス創造に貢献。

中古車販売店の不正請求問題を受け、損保ジャパンは抜本的な組織改革プロジェクト「SJ-R」を発足しました。不正検知強化とLLM活用による業務効率化を推進し、「デジタル部門の解消」を目指します。危機を糧に変革する組織と、求められる人材像に迫ります。

この記事は、SOMPOホールディングスのスポンサードによってNewsPicks Brand Designが制作した、NewsPicks掲載記事(2025年10月30日公開)を転載したものです。

信頼関係が生んだ盲点

──2023年に発覚した中古車販売店による保険金不正請求問題について改めて教えてください。

酒井 この不正請求問題の発覚後に、お客様対応室の責任者として任命され、信頼回復に向けた取り組みを行っておりました。

現在は、全国の保険金支払部門を統括する保険金サービス支援部の中で、SJ-R推進室の室長として業務プロセス・組織体制・システム等の変革を進めています。

不正請求問題は、修理に持ち込まれたお客様の自動車が中古車販売店によって故意に傷つけられる器物損壊や、保険会社への水増し請求等が問題となりました。

当社とこの中古車販売店は、事故車の修理において提携関係にありました。お客様が事故に遭われた際、修理先が決まっていない場合に、信頼できる「修理工場」としてご紹介していたのです。また、この販売店は自賠責保険などを販売する当社の保険代理店でもありました。

なぜ不正を見抜けなかったのか

酒井  不正を見抜けなかった要因は、信頼関係にある工場からの見積もりの査定を簡略化することで、迅速な保険金支払いを優先させていたことにあります。

もともとは優良な工場として信頼しており、「まさかこの工場が不正をするはずがない」という思い込みが生まれ、チェック体制が甘くなっていました。

早くお客様に保険金を支払うことを重視したために、保険会社として本来あるべき「保険金のお支払いの際に十分に精査する」という体制が不十分になり、不正請求が起きてしまったのです。

本当の意味での「お客様目線」が欠如していたと深く反省すると同時に、抜本的な改革が必要だと痛感しました。

SJ-Rプロジェクトの始動

──不正対策を含め、具体的にどのような抜本的改革を進めたのでしょうか。

酒井 根本的に組織全体の業務プロセスや体制そのものを見直す必要がある。そこで2024年4月、新しい損保ジャパンとしての再生を目指し、企業文化・風土、品質管理・ガバナンスなどの抜本的な組織変革を図る「SJ-R」プロジェクトを立ち上げました。

保険金サービス部門(事故や災害が発生した際の受付から保険金のお支払いまでを担う部門)においては、お客様満足、支払適切性、効率性、従業員満足の4軸で「新しい損保ジャパンの構築」を目指しています。

その取り組みの中で、不正検知の仕組みをさらに強化していきました。具体的には、過去の不正事例を教師データとしたAI不正検知システムを導入しました。

担当者の経験や勘に依存していた不正検知を自動化し、修理費の異常な上昇や協定期間の延長といった不正の兆候を、リアルタイムで監視する体制です。

それと同時に、保険の取引によらない客観的な指標・データを基に、お客様目線で適切な修理工場をご紹介できるよう、全国の修理工場のデータベース化を進め、お客様が工場を選べるように「SOMPO 工場検索サイト」を提供しています。

こうした改革を進めるには、デジタル・データ・AIの活用が不可欠です。そこで事業部門とデジタル部門が一体となった開発体制の構築に取り組んでいます。

鳥居 私はSOMPOホールディングスのデジタルデータ戦略部で、このプロジェクトに「スクラムマスター」として関わっています。

スクラムマスターの役割は、アジャイル開発チームの進行管理や課題解決を支援することです。事業部門が作りたいサービスや製品の設計を開発側にどう伝達するか、逆に開発側から「こういうこともできる」という提案をビジネス側にどう伝えるか。この両面を橋渡しすることで、事業価値の最大化を支援しています。

──デジタル部門との協働とおっしゃいましたが、どのような組織なのでしょうか。

鳥居 SOMPOグループは、デジタル技術やデータの活用を加速させるための専門組織「SOMPO Digital Lab」を2016年に立ち上げました。

大手テック企業、コンサルティングファーム、SIer、スタートアップなど、多様なバックグラウンドを持つエンジニアやデザイナー、データスペシャリストが集まっており、約7割が中途採用社員で構成されています。設立時点の人数はわずか5人でしたが、現在は200人規模まで拡大しました。

外部ベンダーに委託していたシステム開発を内製化できるようになったことで、スピード感のある開発が可能になり、開発期間やコストが半分になった事例もあります。

SOMPO Digital Labの最終的な目標は、Google社やSalesforce社のように、どの部署も「デジタル部門」と言える体制の構築です。つまり、「デジタルに特化した部門の解消」を目指しています。

事業部門とデジタル部門がそれぞれに独立して存在しているのではなく、会社全体に当たり前のようにデジタルが浸透している状態への転換を意味します。

アジャイル開発で変わる組織

──事業部門とデジタル部門は、具体的にどのように協働しているのでしょうか。

酒井 従来は、「発注担当」と「開発担当」が分業され、先に作るものを決めてから開発するウォーターフォール型開発がほとんどでしたが、開発までに時間がかかる、手戻りが多い、後からの修正が難しいなど、迅速な改善を繰り返す開発には不向きでした。

そこで、アジャイル型開発の体制を構築し、事業部門とデジタル部門が一体となって企画段階から議論し、2週間ごとに計画・実行・レビュー・改善を繰り返すサイクルに転換しました。

密なコミュニケーションにより、週単位でのシステム修正や改善が可能となりました。

──アジャイル開発への転換は、スムーズに進んだのでしょうか。

鳥居 いえ、組織全体で業務の進め方を大幅に変えるのは、かなり大変でした。「開発の進め方をアジャイル型に変える」と言っても、最初は「アジャイルって何?」というメンバーもいました。

そこで事業部門とデジタル部門の各メンバーを集めて、丸2日間の研修を実施するところから始めました。アジャイル開発の原則・考え方からスクラムで使う単語や概念の理解を深め、フラットにコミュニケーションできるようにするのが目的でした。

部門を超えて共通認識を醸成できたことで、縦割りの分業制よりもより効率的で開発力の高いチームとなっています。

さらに特徴的なのは、プロダクトオーナー(プロジェクト全体の責任者)を事業部門から選出している点です。現場を熟知した人材がエンジニアやデザイナー、データスペシャリストと一緒になって、お客様や現場社員からのフィードバックを取り入れながら開発を進めることで、より実用的なシステムが生まれています。

具体的な成果と変化

──こうした組織改革で、具体的にどのようなサービスが生まれているのですか。

鳥居 お客様や代理店向けの事故連絡アプリや、社内向けの業務効率化ツールなど、さまざまなサービスが生まれています。

特に象徴的なのが「SOMPOあんしん事故連絡」というシステムです。自動車事故に遭ってしまったお客様から連絡を受けた代理店さんが、いつでもどこでもウェブ上で当社に連絡することを可能とするサービスで、GPS機能と写真送信機能を搭載しており、電話では困難だった正確な事故状況の把握を可能にしました。

現在は当社の代理店さん向けのシステムですが、お客様に直接ご利用いただけるバージョンのリリースも予定しております。

従来は、リリースすることがゴールで、一度リリースされれば数年は使い続ける、というのがよくあるパターンでした。しかしこの開発では、リリース後わずか3カ月で大幅なアップデートを実施。ユーザーから「事故現場での操作が分からない」という声を受け、UIを根本的に見直したんです。

有事の際に電話がつながらない、電話だとうまく伝えられないというストレスから解放されたいお客様や代理店さんのニーズに応えるため、リリースして終わりではなく、常にサービスを進化させ続けています。

社内向けには、LLMを活用したLINEお客様対応サービスの自動要約機能も開発しました。

これまで担当者が手入力していたお客様からの問い合わせを自動で要約できるようになり、「全国8000人の社員が1分ずつ業務時間を短縮できれば8000分」という規模感での業務効率改善に成功しています。

──こうした変革を支えるのは、やはり人材だと思います。どのような方と一緒に働きたいとお考えですか。

鳥居 現在SOMPOグループでは、デジタル分野の企画人材に加え、エンジニア、データサイエンティスト、デザイナーなどのデジタル人材を積極的に採用しています。前職の規模や業界は問いません。

「デジタルで事業課題を解決したい」「社会インフラを支える仕事がしたい」という想いを持つ方であれば、当社で大きく成長できると確信しています。

実際に、エンジニアとして入社した方が、いまでは事業企画も担当し、顧客との直接交渉まで任されているケースもあります。

求められる「T字型人材」

──過去の失敗を糧に、業務改革を進める中で、今後目指していく組織の姿をお聞かせください。

酒井 デジタルの知見を活かしつつ、ワンチーム型の組織体制を確立していくことだと考えています。事業部門とデジタル部門が一緒に働き、さまざまな立場の意見やアイデアを取り込みながら改善サイクルを回していく。

事業の効率化とお客様満足度を両立していく仕組みを定着させることが重要です。

鳥居 我々は「T字型人材」と呼んでいますが、これは特定分野の高い専門性(Tの縦軸)を持ちながら、幅広い領域の知識やスキル(Tの横軸)も身に付けた人材を理想としています。

SOMPOグループには保険だけでなく健康・介護・老後資金のウェルビーイングなど幅広い事業領域があるため、意欲次第でどんどんキャリアを広げることができます。

専門性を発揮しながら、新たなことにも挑戦して成長していきたいという意欲のある方には、とても魅力的な環境だと思います。

──チーム内ではどんな人が活躍しているのでしょうか。

鳥居 一般的なエンジニア業務は、外注された要件定義に沿ってコードを書き、納品する「受託開発」が中心かと思います。対して、当社の場合は基本的に内製開発です。

エンジニアやデザイナーと事業部門が連携して開発を進めるため、方針・仕様策定から関われるとともに、リリース後もよりお客様のニーズに沿ったサービス・プロダクトに仕上げていくためのエンハンスにも関わることができます。言わば、クライアントワークと事業会社の「良いトコどり」という点が特徴的です。

専門職でありながらビジネスの知見も積極的に吸収し、新しいサービスの企画立案や意思決定に参加できる方が成果を上げています。

酒井 意欲次第で、さまざまなスキルを習得できる土壌があります。

そうした環境下では、大枠のビジョンやカルチャーに共通認識を持ちつつ、同僚と協業しながらキャリア向上を目指す人材が集まっているので、自己成長を求める人にはぜひチャレンジしてほしいですね。

当社は、過去の失敗を糧に社会的な問題解決に向けて再生している最中です。保険という特定の事業にとどまらず、新たな価値創造に向けて顧客目線で挑戦していく。

そんな理念のもと、メンバーには大きな裁量と役割が与えられます。志の高い方とともに働けると嬉しいですね。

制作:NewsPicks Brand Design
執筆:佐藤隼秀
編集:金子祐輔
撮影:小池大介
デザイン:小谷玖実

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